新型コロナウイルス対策の『行動変容』ってなんだろう?

くらぶオフィス
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新型コロナ対策で最近頻繁に出てくる『行動変容』という用語があります。行動を変えるという意味は何となく分かるのですがあまり聞いたことはありません。

調べるとそこには隠された行動経済学等のノウハウが詰まっていたのです。『行動変容』が持っている意外な目的を3つの視点から紹介します。

その①:行動変容とは
その②:行動変容とナッジ
その③:新型コロナ対策と行動変容
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その①:行動変容とは


新型コロナ対策で知られるようになった「行動変容」という用語を、いままで聞いたことが無かったのではないでしょうか。最初に行動変容について説明します。

行動変容の意味

「行動変容とは、人の行動が変わることをいいます。」

新型コロナ対策ではこの「行動変容」が大切だと専門家会議からも形を変えながら何回も提言がありました。

つまり私たちの行動を変えることで新型コロナ感染拡大を回避することを目的としているのです。

行動変容ステージモデル

行動変容には5つの段階があり、先に進むためにはそれぞれの段階(ステージ)に合わせた働きかけが必要だと言われています。

厚生労働省での資料を参考に以下に行動変容のステージを紹介します。

行動変容ステージモデルでは、人が行動を変える場合は「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えます。
行動変容のステージをひとつでも先に進むには、その人が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけが必要になります。

引用「行動変容とは、人の行動が変わることをいいます。」

新型コロナ対策では、そのステージごとに行動変容の提言とチェックを行っていることが分かります。その経過を追ってみました。

新型コロナ対策での行動変容の流れ

行動変容は次の様なステージ毎に専門家会議(2月14日発足)から提言の形で行われています。

すでにご覧になったのではないでしょうか。経緯の記録です。

2月14日:最初の行動変容の呼びかけ

一日の行動パターンを見直しが提言されました。

対面で人と人との距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされるような環境に行くことをできる限り、回避して下さい。

症状がなくても感染している可能性がありますが、心配だからといって、すぐに医療機関を受診しないで下さい。医療従事者や患者に感染を拡大させないよう、また医療機関に過重な負担とならないよう、ご留意ください。

教育機関、企業など事業者は集会や行事の開催方法の変更、移動方法の分散、リモートワーク、オンライン会議などのできうる限りの工夫を講じるなど、協力してください。

3月2日:若者への行動変容の提言

この時点では若者の重症化するリスクが低いとされていることから、その行動により感染拡大につながることを提言し集まる場所についての行動変容を促しています。

全国の若者の皆さんへのお願い
10代、20代、30代の皆さん。若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。

引用:新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解(クラスター対策)(3月2日)

3月9日:行動変容の提言

これまで「集団感染が確認された場に共通する3つの条件」を上げて行動を変えるように説明しています。

①換気の悪い密閉空間であった
②多くの人が密集していた
③近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた

上記の 3 つの条件が同時に重なった場で集団感染が確認できたというのです。

市民のみなさまは、これらの3つの条件ができるだけ同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。

引用:新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」

4月1日:行動変容の提言(行動変容の使用)

この時点で初めて「行動変容」の用語が出てきて具体的な行動が示され始めました。

行動変容の必要性について以下の3つについて具体的に「行動変容」を説明しています。

(1)「3つの密」を避けるための取組の徹底について
(2)自分が患者になったときの、受診行動について
(3)ICTの利活用について

「これまでも、多くの市民の皆様が、自発的な行動自粛に取り組んでいただいているが、法律で義務化されていなくとも、3つの密が重なる場を徹底して避けるなど、社会を構成する一員として自分、そして社会を守るために、それぞれが役割を果たしていこう」

引用:専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月1日)

とまとめています。

4月22日:行動変容の状況確認と提言

行動変容の状況等

(1)緊急事態宣言下における接触機会の8割の削減
(2)接触の削減やテレワーク等をめぐる問題
(3)偏見と差別について

緊急事態宣言が発出された状況下で行動に求められることを以下の様にアドバイスしています。

「③市民の行動変容」につい ては、都市部を中心に市中感染のリスクが拡大している中、「3密」に代表されるハ イリスクの環境を徹底して回避するための行動制限に加えて、接触の8割を削減する という市民の行動変容をいかに徹底するかにより、まん延の区域の拡大を収束に向か わせることが求められる。

引用:専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月22日)

緊急事態宣言下での行動変容の評価をしながら、5月6日の緊急事態宣言の期限に向け現状や対策についての分析を進めるとしています。

5月1日:行動変容の提言

オーバーシュートを逃れ、新規感染者数は減少傾向に転じるという一定の成果と今後長丁場が予想されることから5/7以降の対策に関する基本的考え方や今後求められる対応について具体的に行動変容を提示しています。

この時の行動変容は以下の3つを徹底的に行うことでした。

・手洗いや身体的距離確保
・3つの密を徹底的に避ける
・人との接触を8割減らす10のポイント

5月4日:「新しい生活様式」行動変容の提言

先の行動変容の状況を踏まえて以下の提言がなされました。
今度は「新しい生活様式」という形式で具体的に行動を変えることを提言しています。

以下に「新しい生活様式」での行動変容の具体的な提言が公表されました。今までの成果を公表するとともに行動変容の次のステージにおける状況を検討して、より具体的な提言をしています。

一人一人の基本的感染対策
出典:「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 4 日)
日常生活を営む上での基本的生活様式
出典:「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 4 日)
日常生活の各場面別の生活様式
出典:「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 4 日)
働き方の新しいスタイル
出典:「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 4 日)

その②:行動変容とナッジ

これらの行動変容を他国の様に法律で行動を規制したり罰金を取ったりしてはいません。

この行動変容を実施する上で使われてのが「ナッジ」という方法です。

いままで専門家会議の提言では、対処をどうするか自分で選択できる方法がとられていることに気付くのです。

この方法こそが行動経済学での「ナッジ」なのです。この説明だけで終わってしまうのでポイントだけを紹介します。

ナッジ(Nudge)とは?

「ナッジ(Nudge)」という言葉をご存じの方も多いのではないでしょうか。

辞書で調べると、(注意を引くためひじで)そっと突く、そっと突く、(ひじで)そっと(横に)押して動かす、ひじで押しながら進む、そっと動かすという意味です。(Weblio)

しかし、ここでは行動経済学での意味で「人びとが強制的にではなく、より良い選択を自発的に取れるように手助けする方法」をいいます。

つまり規制や強制ではなく、選択の自由は残されていることが特徴です。

新型コロナ対策での行動変容を国民に要請するときには、私たちが自分にとって医師h版良い方法を自分で選べるようにサポートする立ち位置で提言しています。

その③:新型コロナ対策と行動変容

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐための対策でロックダウンが一般的な海外と自粛要請スタイルの日本の対策には大きな違いがありました。

日本独自と言われ賛否両論のある自粛と生活変容の要請です。

このナッジを活用した対策の実施により選択の自由を残しつつ⼈々が⾃分⾃⾝にとってより良い選択を⾃発的に取れるようにしていたのです。

その⼿助けする感染拡大防止の政策⼿法を取っていたのです。

おわりに

新型コロナ対策で行動変容が使われている理由を紹介しました。

そこにはナッジという考え方も並行して使われていることがわかりました。日本独自の方法であり日本人の国民性がなせる対策ではないかと思いました。

このナッジを含めた考え方は生活や仕事でも使えるので紹介しました。

参考図書

実践 行動経済学(Amazon)
リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン 著/日経BP 刊

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」(Amazon)

参考サイト

厚生労働省:新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等
環境省:「ナッジ」活用に向けた取組状況について

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