次亜塩素酸水の効果が「ある?ない?」で混乱が起きています。はたして新型コロナに効果はあるのでしょうか?
2020年6月12日朝7時のNHKニュースでは「次亜塩素酸水は、新型コロナウイルスの消毒に有効だとして利用が進んでいましたが、先月29日、経済産業省や独立行政法人のNITE=製品評価技術基盤機構が、「現時点では有効性は確認されていない」との中間報告を公表したことを報道していました。
様々な憶測が飛び交う背景には団体によって次亜塩素酸水の効果を公表する背景の違いがある様です。なぜ効果について判断が分かれたのか背景を調べてみました。
その2:新型コロナと不活性化
その3:本当の情報はどこで知るのでしょうか
その1:次亜塩素酸水「有効性」2つの見解
そもそも次亜塩素酸水が新型コロナウイルスを不活性化(菌の場合は殺菌というがウイルスの場合は不活性化という)させる効果が「ある?ない?」で混乱している原因はなんでしょうか?
すると「次亜塩素酸水溶液普及策晋会議」と「経済産業省、独立行政法人NITE(製品評価技術基盤機構調)」の関係であることが見えてきました。
(1)「有効性がある」という見解
次亜塩素酸水については一部の研究者やメーカーが参加する団体が「新型コロナウイルスの消毒に効果がある」としていると言うことなので、それはどこかを知らべると「次亜塩素酸水溶液普及策晋会議」に行きつきました。
次亜塩素酸水溶液普及策晋会議
有志で構成されて当普及会は、6月11日東京都内で記者会見を開きました。その中で、現在報道されてる「次亜塩素酸水は新型コロナウイルスに効果がなく、空間噴霧が有害だ」とする内容は「明らかな誤報」だと主張しています。
この有志の会の研究者は次の様に述べています。
三重大大学院教授の福崎智司氏
空間噴霧による付着菌除去の効果を説明し「濃度を制御して使えば人体に影響はない」と述べています。
北海道大名誉教授の玉城英彦氏
コロナウイルスへの有効性を検証中の独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)と同じ方法による実証実験の結果、次亜塩素酸水により瞬時に不活化したと明らかにし、「帯広畜産大の実験でも同様の結果が出ている」と述べています。
東工大特任教授の奈良林正氏
米国では「環境保護庁」「疾病予防管理センター(CDC)」「海運局」などで次亜塩素酸水がコロナ対策に採用されている。中国国家衛生健康委員会の消毒指針は「空気や手、皮膚、粘膜」などの消毒剤として有効と記ていることを紹介しました。
(2)「有効性は確認されていない」という見解
経済産業省、独立行政法人NITE(製品評価技術基盤機構)
5月29日の中間報告において「現時点では有効性は確認されていない」との見解を公表しました。
なお、「次亜塩素酸水」については、今回の委員会では判断に至らず、引き続き検証試験を実施することとされました。
引用:独立行政法人NITE「新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します(第2弾)」
■参考サイト:SankeiBiz(産経新聞グループの経済情報サイト)
(3)現場の混乱
両者の見解において現場では混乱が生じています。
経済産業省、独立行政法人NITEの見解を受けて文部科学省が学校で噴霧器による散布を行わないよう通知したほか、公共施設や飲食店、スーパーなどでも次亜塩素酸水による消毒を取りやめるところが相次いでいます。
その2:新型コロナと不活性化

新型コロナウイルスに効果があるかどうかを知る基本的な知識を確認したいと思います。
ウイルスには2種類の構造
ウイルスはその構造からエンベロープのある「エンベローブウイルス」とない「ノンエンベローブウイルス」に分けられます。
エンベロープとは、脂肪・タンパク質・糖タンパク質からできている膜のことを言います。自分で 生きることが出来ないウイルスは他の細胞の中で増殖します。そして増殖すると細胞から飛び出します。その時に細胞の成分をまとって出てきたものが「エンベローブウイルス」です。
この脂質性の膜「エンベローブ」を持っているかいないかでウイルスの不活性化(菌では殺菌)に対する効果が違います。
エンベローブウイルス
脂質性でアルコールに弱くそれにより膜を壊されるとウイルス自体が活性化を失います。このタイプのウイルスはアルコールでの不活性化が期待できると言われています。
ノンエンベローブウイルス
膜を持っていないことからダメージを受けにくくアルコール消毒は効きにくいと言われています。
新型コロナウイルス
日本感染症学会によると「コロナウイルスはプラス鎖一本鎖のRNAをウイルスゲノムとして有するエンベロープウイルス」としています。
さらに「新型コロナウイルスはエンベロープウイルスですのでアルコールなどで感染力を失うことが知られています。」と予防について述べています。
新型コロナウイルスはアルコールでは効果があっても、「次亜塩素酸水」によって不活性化できるのかが確認されなければなりません。
参考サイト:日本感染症学会
その3:本当の情報はどこで知るのでしょうか
東京大学の鳥海不二夫准教授は「まだ結論が出ておらず、今後の情報を慎重に見極めるべきだ。色々な情報がある中で、誤った情報に引き寄せられる可能性もあり、出どころをきちんと確認する姿勢が重要だ」と指摘しています。
引用:NHKのニュースサイト
次亜塩素酸水溶液普及策晋会議の見解が正しかったとしても、正式な見解は今のところ独立行政法人NITE(製品評価技術基盤機構)の結果を待つことではないかと思います。
いずれにしても独立行政法人NITEから次亜塩素酸水に関して結論が出るのを待つことになります。
おわりに
新型コロナに次亜塩素酸水は効果があるのかないのかについて見解が分かれた背景を紹介しました。
未知のウイルスだけに次亜塩素酸水の効果が確認されていないのですね。