新型コロナ発『世界的食糧危機』を警告する国連とWTO、日本は大丈夫か?

くらぶオフィス
この記事は約9分で読めます。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で日本は食糧不足になるのでしょうか?

すでに世界の中で最も脆弱な地域では食料を奪い合っている光景が報道されたうように混乱が出始めているようです。

食料の輸出国での生産量が減って自国優先になり、その影響で日本には食料が入ってこなくなる心配はないのでしょうか。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は2020年3月11日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を「パンデミックとみなせる」と宣言しました。

そのころ、まだ世界は農作物の不足はなく食料備蓄も潤沢にありました。

しかし、一方では保護主義的規制、輸送経路が確保できないなどの兆候も次第にみられ始めたのす。

新型コロナの影響でどうなるのか国連とWTOのコメントをもとに以下の3つのポイントでまとめてみました。

尚、この記事では信頼性を確保するため、国連、WTO、WHO、日本の経済関連研究所のレポート、報道記事等を参考にしています。原文の所在は後半で紹介しています。

その①:国連とWTOが世界的食料危機を危惧
その②:IMFが世界恐慌以来の未曽有の危機を警告
その③:日本の経済対策
スポンサーリンク

その①:国連とWTOが世界的食料危機を危惧

2020年4月1日国連専門機関の国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉事務局長、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長、関連機関の世界貿易機関(WTO)のロベルト・アゼベド事務局長の3名の連名で共同声明を出し警告をしました。

3名の共同声明
・国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉事務局長
・世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長
・世界貿易機関(WTO)のロベルト・アゼベド事務局長

Mitigating impacts of COVID-19 on food trade and markets
「”Uncertainty about food availability can spark a wave of export restrictions, creating a shortage on the global market. Such reactions can alter the balance between food supply and demand, resulting in price spikes and increased price volatility. We learned from previous crises that such measures are particularly damaging for low-income, food-deficit countries and to the efforts of humanitarian organizations to procure food for those in desperate need.”」

食糧不足の懸念

その警告の内容は次の通りです。現在ピークを越したとも言われていますが今なお世界各国で感染が広がっている新型コロナウイルスの危機に対して、政府関係当局が適切な対処ができなければ世界的に「食糧不足になる恐れがある」というものです。

具体的には「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」と述べています。

この背景には2007年の世界金融危機の経験があります。サブプライム住宅ローン危機を発端としたリーマン・ショックと、それに連鎖した一連の国際的な金融危機でした。

危機の後には、コメの生産国であるインドとベトナムがコメの国内価格の上昇を避けようとして輸出を規制しました。

その結果コメの国際価格が急騰して一部の発展途上国で暴動にまで発展してしまったことです。

労働者不足

世界的なロックダウンにより労働者の移動が制限されるため、生産はもとより、物流、ロジスティクス(経営管理)に関する問題が大きいようです。

食料品のサプライチェーンに直接関わる人とそれ以外の人の両方に対して、感染から健康を守る必要があると述べています。

さにに食料品のサプライチェーンを維持する上で、「食料の生産・加工・流通に携わる労働者を保護する必要もある」と強調しています。

新型コロナの感染拡散を遅らせるための対策として世界では多くの国の政府がロックダウン(都市封鎖)を行いました。

その結果、国際貿易と食料品のサプライチェーンには深刻な影響が出ているというのです。

ロックダウンを行った国では住民がパニック買いに走り、スーパーマーケットの陳列棚が空になったことが報道されました。新型コロナの国際的な影響は食料品のサプライチェーンのもつ脆弱性が露呈したともいえます。

国際的な食料品のサプライチェーンとは違いますが、日本では在庫が十分あるのに「買いだめ」が起こりました。

2020年3月25日夜、東京都の小池百合子知事が緊急記者会見を開き週末3月28日・29日は不要不急の外出を自粛するよう要請しました。その内容は平日も出来る限り自宅で仕事し、夜間の外出を控えるよう呼びかけたものでした。

スーパーで買いだめ
買いだめで空になった近所のスーパーの棚 2020年3月26日午後

その直後から都内のスーパーなどでは食料品を「買いだめ」する人の姿が多く見られるようになり翌日は早朝から行列ができました。

急激な店頭の需要に供給が間に合わなかったためです。在庫が十分に確保されている国内ですら「急な買いだめ」でこの様な行動が起きています。

その②:IMFが世界恐慌以来の未曽有の危機を警告

国連は、新型コロナウイルスの世界的な感染の影響で、 今年2020年の世界の経済成長率は前の年と比べてマイナス3.2%になるとの予測を発表しました。

国連の経済社会局はことしの経済見通しを発表しました。

それによりますと、標準的な想定として今後、多くの国が経済活動を徐々に再開し、感染防止措置も続けた場合、ことしの世界の経済成長率は前の年と比べてマイナス3.2%となり、1930年代の世界恐慌以来の景気後退になるとしています。

このうち、アメリカはマイナス4.8%、日本はマイナス4.2%で、高成長を続けてきた中国も1.7%のプラス成長にとどまるとしていて、日本については、「実質賃金と個人消費、住宅投資と輸出の減少によって危機は来年まで続くだろう」と指摘しています。

また、最悪の想定として、ことし後半に感染拡大の第2波が押し寄せて、多くの国が来年の前半まで都市の封鎖や経済活動の制限を延長することが求めらた場合を挙げて、ことしの世界の経済成長率はマイナス4.9%まで落ち込むおそれがあるとしています。

そのうえで、「長引く経済の低迷が、おもに発展途上国で貧困と不平等を増大させる可能性が高い」として、感染対策の国際協力と発展途上国への経済的な支援が必要だと訴えています。

その③:日本の経済対策

食料危機の危惧や経済対策の点から日本ではどのようになっていくのかを調べてみました。2つの観点からの見通しです。

食料危機に関する対応

日本における飲食料の最終消費額の内訳をキャノングローバル研究所研究主幹山下 一仁氏のレポートを参考に以下の様にまとめてみました。(原文は記事後)

輸入農水産物は2%程度にすぎない。国産農水産物でも13%、85%は加工、流通、外食などが占める。輸入農水産物の一部である穀物の価格が上がっても、最終消費には大きな影響を与えない。このような消費のパターンは先進国に共通する。我々は農産物ではなく、加工、流通、外食にお金を払っている。

引用:キャノングローバル研究所

つまり農水産物輸出国が輸出制限をかけて物価が高騰してもその割合は2%程度で、結果として食糧危機のリスクは少ないと述べています。

むしろ現実味のある危険性は「日本周辺で軍事的な紛争が生じてシーレーンが破壊され、海外から食料を積んだ船が日本に寄港しようとしても近づけないという事態」が起きたときだといわれています。

今回の新型コロナで一部の国が輸出制限を行ったとしても、シーレーンが確保されている限り日本に食料危機は起きる可能性は少ないという見方が専門家の意見です。

しかし、万が一シーレーンが新型コロナのなんらかの影響で止まるという事態が生じた場合はこの限りではなくなります。海外から物が一切入ってこないからです。

山下氏によれば、日本がこれから必要な対策は2つあるようです。一つは短期的な対策として当面の食料備蓄で、もう一つは中長期的な対策でコメを作ることだというのです。国内で余ったコメは通常は輸出に回し、危機の時に国内に回すことです。

米価を下げ、米を大量に輸出することを検討すべきである。平時には、小麦や牛肉を海外から輸入し、米を輸出する。海外との物流が途絶え、輸入が困難となったときは、輸出していた米を消費するのである。平時の際の米の輸出は、お金のかからない食料備蓄の役割を果たす。また、輸出できるほど米の生産を行うことは、水田という農地資源の維持につながる。

引用:キャノングローバル研究所「新型コロナウイルスで食料危機が起きるのか?」より

経済対策に関する対応

一般的な景気悪化による経済対策は、落ち込んだ「需要の喚起」に重点が置かれます。

しかし、今回の新型コロナ禍で政府は感染拡大を防ぐために人為的に需要を抑えている点が通常とは異なります。これはかなり特殊な状況下にあると言われています。

つまり、現在は緊急事態宣言もあり外出自粛等の対策によって消費の場が失われたままとなっていいることです。この状況下で通常の対策の「所得税や消費税の減税」による消費の需要喚起策を推進しても意味をなさないともいえます。

一方今回日本政府が行った「雇用の維持と事業の継続」には以下の様に一定の評価がされています。

政府の緊急経済対策では中小・小規模事業者等に対する給付金、資金繰り対策、減収世帯への給付金など「雇用の維持と事業の継続」に重点が置かれていることが特徴である。需要の押し上げ効果は限定的だが、経済活動を制限する中での経済対策として、セーフティーネットの強化に重点を置いたことは一定の評価ができる

引用:ニッセイ基礎研究所「新型コロナ対応の経済対策は “経済的な死者”の急増阻止を最優先に」

先にも書いたように新型コロナウイルス流行の第2波は必ず来るといわれています。

第2波による感染防止対策で経済悪化が想定を上回った場合は、さらに大胆な経済対策が望まれています。

【参考サイト】

「未曽有の危機」警告 世界恐慌以来の不景気に―IMF専務理事:JIJI.COM
新型コロナに続き「世界的食料危機」の恐れ、国連とWTOが警告:JIJI.COM
国連 1930年代 世界恐慌以来の景気後退予測 新型コロナ影響:NHKニュース
新型コロナ対応の経済対策は “経済的な死者”の急増阻止を最優先に:ニッセイ基礎研究所
新型コロナが引き起こす世界的食料危機:THE WALL STREET JOURNAL
新型コロナウイルスで食料危機が起きるのか?:キャノングローバル戦略研究所

【参考図書】

「新型コロナ恐慌」後の世界(Amazon)

おわりに

新型コロナの影響がどの様に世界の食料や経済活動に影響するのかをまとめました。ウイルス感染では第2波、さらには第3波が来ると言われています。

早ければ8月頃、または12月の冬あたりと予測している専門家もいます。

新型コロナで我が国の医療体制の取材があった2月頃、各テレビ局は日本の病院では世界トップクラスの陰圧室を備えていて万全だと自信をもって報道していました。

それからわずか2カ月後にはマスクも無く、医療用ガウンはゴミ袋、防護マスクは手作りでベッドが不足、救急搬送のたらいまわしが起きることはだれしも想定はできませんでした。

新型コロナは今までの常識を覆す事態を起こす要因を持っています。食料危機も今後いままでの予測が通じるのかはだれにも分かりません。

スペインかぜでは第2波での影響が格段に大きかったことから、夏までの落着いた時期を利用して早急な第2波対策をする必要があると思います。

タイトルとURLをコピーしました