大阪府はデータに基づいた独自の「大阪モデル」で緊急事態宣言の自粛解除の目安を公表しました。
吉村洋文知事は2020年5月5日午後に公表した目標は実績を積み重ねたデータを使ったものでした。
具体的な数値目標を設定することで出口が見えてきます。公表された内容を元に大阪府の出口戦略を5つの数値目標から紹介します。
その②:経路不明者の新規感染者数(日ごと)
その③:PCR検査における陽性率
その④:重傷患者の病床使用率
その⑤:自粛解禁の目安
その①:経路不明者の新規感染者数の減少
経路不明者数は市中感染がどれくらい進んでいるのかを知ることができるデータです。
大阪府では独自のPCR検査体制をつくり検査要望の殆どが実施されているとのことで、より正確な全体の検査件数を把握しています。
一方政府の方針はクラスター感染を止めるためのPCR検査で、対象者を絞って行う独自の方法です。
発熱が4日以上続いた場合などの条件で選んだた患者だけに行ったため全体が見えないことがネックとなっています。
その②:経路不明者の新規感染者数(日ごと)
日ごとに経路不明者数が把握できていることから正確に分かるデータです。
PCR検査は殆どの対象者で実施していることから、経路不明者は実数に近い数字が見えてくるのではないかと思われます。
その③:PCR検査における陽性率
この「7%未満」の根拠について白鴎大学の岡田晴恵教授が次の様に解説しています。
陽性率7%未満という基準は千葉大学の研究論文で発表された数字です。陽性率が7%以上になると死亡者数が5~10倍以上に増えるというのです。
千葉大学の陽性率7%の研究論文
千葉大学大学院 薬学研究院および医学研究院の研究グループは、「西洋の国々で陽性率が 7%未満の国では、陽性率がそれ以上の国に比べて 1 日の死亡者の割合が15%でしかない」との解析結果を発表しました。
十分な PCR 検査の実施国では新型コロナの死亡率が低い
引用:千葉大学大学院 薬学研究院および医学研究院の研究グループ
死亡者数からは、西洋とアジアでは感染の広がりは 100 倍違う
千葉大学の研究では、下のグラフで分かる様にPCR検査の陽性率が7%未満(緑の線)だと死亡者数が少なく、超えると一気に増加することが分かります。
7%未満という数字が大きな意味を持っていることが見えてきます。

研究を主導的に進めた千葉大学大学院 薬学研究院の樋坂章博教授はPCR検査について次のように提言しています。
「この研究は世界で初めて新型コロナ感染症での PCR 検査陽性率と死亡者数との相関を見いだしたものです。死亡者を増やさないためには、PCR 検査を充実させることが必要です。
引用:千葉大学「大学院 薬学研究院の樋坂章博教授」ニュースリリースより
しかし、私たちは、医療従事者の負担を今以上に増やすことは無理であることをよく知っています。
そこで私たちは、適切であれば医療関係者や研究者等を総動員してでも前向きに社会全体で PCR 検査拡大を強くサポートする必要性を提案します。」
大阪モデルが設定した「陽性率7%未満」の根拠だと分かります。
その④:重傷患者の病床使用率
60%未満での使用率であれば重症患者のたらいまわしの様なことが起こらない数字としています。医療体制がひっ迫しないための数字です。
重症患者とは厚生労働省で次の様に定めています。
重症の新型コロナウイルス感染症患者(※ECMOや人工呼吸器による管理等を要する患者)
引用:厚生労働省
ECMOや人工呼吸器による管理等を要する患者をいいます。
その⑤:自粛解禁の目安
緊急事態宣言の自粛要請の解禁の目安は、条件①~④の全てが7日間連続で達成できたときとしています。
すでに大阪府では直近のPCR検査の陽性率が 2.8%であることや重症患者数の病床がリアルタイムで把握して公表しているといいます。
現状から目標は達成できる可能性をもっており府民のモチベーションを上げることに繋がるのではないでしょうか。
おわりに
今回公表された「大阪モデル」は吉村知事の強いリーダシップによりデータの見える化と日々変わる数値を大阪府民と共有できる仕組みを作ったモデルと言えるのではないでしょうか。
出口の見えない暗いトンネルから「明かりが見える出口」を具体的に示したケースとして見守っていきたいと思います。