新型コロナウイルスのワクチンはいつできる?開発の動向

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新型コロナウイルスのワクチン開発の動向と完成予定等をWHO(世界保健機構)の情報も参考にまとめました。

世界で開発が進んでいる新型コロナウイルスのワクチンの開発は急がれていて日々更新されています。

この記事では世界の主なワクチン開発会社の概要とワクチンの種類や試験段階等を簡単に紹介しています。

尚、記事内での情報は各報道とWHOの情報を元に2020年5月末の段階で作成しています。開発のスピードが速く記事内容との相違が生ずることがあります。正確な情報はその都度ご確認をお願いいたします。

その①:新型コロナウイルスのワクチン開発の動向
その②:日本のワクチン開発状況
その③:ワクチンの種類と完成までのプロセス
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その①:新型コロナウイルスのワクチン開発の動向

出典:国立感染症研究所「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」(SARS-CoV-2)
出典:国立感染症研究所「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」(SARS-CoV-2)

世界保健機関(WHO)によると、新型コロナ向けワクチンは2020年5月27日時点で世界で125件の開発案件があり、その中の10種類が臨床試験(治験)の段階にあるとしています。

■参考資料WHO:Draft landscape of COVID-19 candidate vaccines

その内の5種類を中国勢が占めています。

最も開発が進んでいるワクチンは米国の「モデルナ」と中国の「カンシノ・バイオロジクス」の2社です。この米中間の開発競争は激しさを増しています。

例えば米国のモデルナが3月16日に1番手で臨床試験に着手すると、翌日には中国のカンシノも試験開始を発表しました。

また5月18日に米国モデルナが試験結果の速報を発表すれば、中国のカンシノも5月22日に試験結果を論文発表するなど両国の開発競争は続いています。

現状ではイギリスのオックスフォード大学が開発を進めているウィルスペクターワクチンが最も進んでフェーズ3に、アメリカのモデルナが開発を進めるRNAワクチンも7月にはフェーズ3へ進む予定となっています。

以下に競争激化している米モデルナと中国のカンシノを含む主な世界の新型コロナウイルスのワクチン開発会社を紹介します。

(1)(米国)モデルナ、(スイス)ロンザと提携

①開発ワクチン:メッセンジャーRNA「mRNA-1237」

米国の医薬品企業のスタートアップ「米国のモデルナ」は新しい「メッセンジャーRNA(mRNA)」の技術を持っておりワクチン「mRNA-1237」を開発しています。

スタートアップとは、短期間でイノベーションや新たなビジネスモデルの構築や新たな市場の開拓を目指す動き或は概念のことです。

②完成時期
7月には大規模な治験フェーズ3に移行。その後量産を目指す。

③会社概要

モデルナは2016年7月に設立されたバイオ医薬品メーカーで従業員は830人の新しい会社です。

特徴は「細胞に指令を出し細胞内たんぱく質を生成する新しい治療法」を提供しています。

予防ワクチン、がんワクチン、腫瘍内免疫療法、局所再生治療法、全身分泌治療法、全身細胞内治療法などの分野で複数のパイプラインを保有しています。本社所在地はマサチューセッツ州ケンブリッジ。

開発にあたりスイスのバイオテクノロジー大手ロンザと提携契約を結んだことを2020年に発表しています。

ロンザの概要
1897年に発電所として設立され従業員数は1万5500人超で35カ国以上に120カ所の拠点とオフィスを構えている大手の企業です。

(2)(中国)カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)/北京バイオテクノロジー研究所

①開発ワクチン:アデノウイルスベクターワクチン

②完成時期
早ければ実用化は2020年秋ごろの予定。

アデノウイルスベクターワクチンに関しては、陳薇院士(中国軍事科学院軍事医学研究院研究員)チームによる臨床研究が行われました。

・第1期臨床試験を完了:3月末
世界で初めてヒトに対する効果が確認されました。

・第2期の臨床試験のボランティアを募集開始
4月9日から進行中。世界で初めて第2期臨床研究の開始しています。

・第3臨床試験
カナダ国立研究機構と共同で実施する計画をもっていてます。理由はカナダは新型コロナの感染者が多く、研究地として有効と判断したためです。第3臨床試験で最終的には数千人規模の臨床試験が必要とされています。

早ければ実用化は2020年秋ごろではないかと中国メディアの第一財経が述べています。

③会社概要
中国の製薬スタートアップ「カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物股分公司)(旧名:天津康希諾生物技術有限公司)」は、中国を拠点としています。中国国内で、主にヒト向けワクチン製品の研究開発、製造、および商品化に取り組む会社です。

(3)(米国)イノビオ・ファーマシューティカルズ

①開発ワクチン:DNAワクチン「INO-4800」

②完成時期
4月に臨床試験開始。実用化まで12~18カ月程度かかる見込み。

「INO-4800」はCOVID-19を引き起こす新型コロナウイルスSARS-CoV-2に効果を発揮するようつくられたDNAワクチン候補です。

DNAワクチン「INO-4800」は4月に臨床試験を始めました。実用化まで早くて12カ月から18カ月程度かかると想定されている。

③会社概要

イノビオ・ファーマシューティカルズ(INOVIO*略称イノビオ)は米国のバイオ医薬品企業です。

癌や感染症に焦点を当てたワクチンや免疫療法(合成ワクチン)の開発に従事していて予防用合成ワクチンと治療用合成ワクチンを提供しています。

また、ヒトパピローマウイルス・子宮頸癌、鳥インフルエンザ、前立腺癌、白血病、B型・C型肝炎ウイルス、HIVなどの臨床プログラムを手掛けています。

イノビオはコロナウイルス関連業務の経験が豊富で中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こす関連コロナウイルス用の第2a相ワクチンを有する唯一の企業です。

(4)米国ファイザー/独バイオファーマシューティカル・ニュー・テクノロジーズ(バイオNテック)

①開発ワクチン:メッセンジャーRNA「BNT162」

②完成時期
早ければ年内に数百万~数千万本を生産できる見通し。

米国ファイザーはドイツのベンチャー企業バイオファーマシューティカル・ニュー・テクノロジーズ(ビオンテック)と提携して開発中の新型コロナウイルス用ワクチンの臨床試験を開始しています。

4月23日から現在までにドイツの被験者12人に接種を行いました。今後さらに被験者を200人程度にまで増やす予定であり、さらに米国においても試験実施が認可される見込みです。

米国での臨床試験では対象となる360人を18~55才と65~85才の2グループに分けて実施します。

年齢が若いグループで安全性と免疫システムの反応が確認された時点で高齢者層のグループの臨床試験を開始するようです。

臨床試験の開始は通常のワクチン開発時間に比べて異例の速さだと伝えています。

③会社概要

ファイザーは米国大手医薬品メーカー。循環器系、中枢神経系、鎮痛・抗炎症系、筋骨格系、感染症、泌尿器系、眼科系、ガン、内分泌系、ワクチンの薬剤を開発、製造、販売。

主要製品は「セレブレックス」、「チャンテックス」、「リピトール」、「リリカ」、「プリスティーク」、「バイアグラ」。抗感染、内分泌傷害、血友病、炎症、多発性硬化症の医薬品も展開。

提携会社の「バイオファーマシューティカル・ニュー・テクノロジーズ(バイオNテック)」はドイツのベンチャー企業です。

(5)米国ノババックス

①開発ワクチン:ナノ粒ワクチン「NVX‑CoV2373」

②完成時期
5月25日の情報では現在フェーズ1の段階で7月の結果をみてフェーズ2へと進む予定。

米バイオ医薬品会社ノババックスは新型コロナウイルスワクチン候補「NVX-CoV2373」の初の臨床試験(治験)を始めたと明らかにしています。

治験は18~59才の健康な約130人が参加します。安全性と、免疫反応を誘発するかどうかを調べ7月に初期結果が出る見通し。

有望な結果が得られれば、米国を含む複数の国でより幅広い年齢を対象に第2相臨床試験を実施します。また「NVX-CoV2373」が新型コロナウイルス感染症のリスクを低減するかどうかも調べます。

③会社概要

ノババックスは、臨床段階の米国バイオ医薬品企業。

組換えナノ粒子ワクチンおよび抗原性補強剤の発見、開発、商業化に従事しています。呼吸器合胞体ウイルス、季節性インフルエンザと新型インフルエンザのための臨床開発などの感染症に対象を当てて遺伝子組み換えによるワクチンを開発しています。

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その②:日本のワクチン開発状況

日本は厚生労働省が2020年度の補正予算で100億円を計上し、基礎研究から臨床試験の一部までを支援するとしていましたが、その後開発支援を拡大しています。

第1次補正予算:ワクチン開発予算100億円
第2次補正予算:生産支援も含めて約2000億円を追加

ちなみにアメリカが1兆700億円、中国は15兆円です。日本とは桁が違います。

ワクチンの製造設備を新たに立ち上げる事業者を5社ほど募り各200億~300億円を助成する。

臨床試験と並行して量産体制を整え、いち早く国民にワクチンが行き渡るようにする考えです。

支援の対象となる研究は「日本医療研究開発機構」=AMEDが公募して、企業主導型4件、大学等主導型5件の合計9件としました。

■参考資料:日本医療研究開発機構
令和2年度 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」の採択課題について

■参考資料:厚生労働省
・新型コロナウイルスに対するワクチン開発を進めます(第2報)

企業主導型の4件

東京 千代田区の「IDファーマ」に1億2400万円、大阪市の「塩野義製薬」に13億900万円、熊本市の「KMバイオロジクス」に10億6100万円、大阪 茨木市の「アンジェス」に20億円となっています。

アンジェス 

完成時期:2021年春か状況では最短で年内も

日本では、アンジェスのワクチンが最初の治験にはいるようです。アンジェスは創薬ベンチャーのため臨床開発や製造などの機能がありません。そこで日系8社などと手を組んで臨床試験から薬事、製造までカバーしています。

最初の第1相試験は7月から大阪大学医学部付属病院などで行います。

その後、秋に大規模治験へ移行して2021年春頃の供給開始をめざしていますが、状況によっては最短で年内の実用化も可能としています。

塩野義製薬

①完成時期:年内治験開始で年度内の実用化を目指す

塩野義製薬はが年内の治験開始で年度内の実用化をめざしています。背景には買収したUMNファーマの基盤技術を活用してワクチンを開発していることです。

KMバイオロジクス

明治ホールディングスが買収したKMバイオロジクスは「不活化ワクチン」の開発を開始しています。

KMバイオロジクスは数年前に政府が助成した「細胞培養型パンデミック・ワクチン」を開発するプロジェクトに参画した経緯があります。

同プロジェクトに参加した武田薬品工業はワクチン製造設備がある光工場を利用して製造協力を検討しているようです。

国立感染症研究所、東京大学医科学研究所・医薬基盤・健康・栄養研究所と協業します。

IDファーマ

アイロムグループの100%子会社がIDファーマです。

IDファーマと国立感染症研究所はIDファーマが保有する「センダイウイルスベクター」を用いてエイズをはじめとする感染症ワクチンの研究開発を長年共同で行っています。

その共同研究の一つとして、新型コロナウイルスに対する新しいワクチンについても共同で研究開発を進めています。

大学主導型の5件

大学等の主導によるワクチン開発には以下の支援があります。世界の開発支援レベルからするとかなり差があるようです。

慶應義塾大学:2億5800万円
東京大学:2億円
長崎大学:5000万円
新潟大学:3800万円
東京都医学総合研究所:5億円

その③:ワクチンの完成までのプロセス

WHOによると、5月27日時点で世界で125件の開発案件があり、そのうち10件が人に直接投与する臨床試験まで進んでいることは前に書きました。

ではワクチンにはどの様な作り方の分類があるのか調べました。また完成するまでの段階(フェーズ)についても説明します。

作り方による5つの分類

ウイルスのタンパクを体に入れて抗体を作るのがワクチンの原則です。その方法には以下の5つの方法があります。

①不活化ワクチン
②ウイルスベクターワクチン
③サブユニットワクチン
④RNAワクチン
⑤DNAワクチン

①不活化ワクチン

化学的処理などでウイルス全体の感染力を失わせタンパクを体内に入れる方法

②ウイルスベクターワクチン

体内でタンパクを作らせる方法です。別のウイルスを改変し新型コロナウイルスのタンパクの遺伝子を持った人工ウイルスを作る方法。

これを摂取すると体内で新型コロナウイルスのタンパクが作られます。

③サブユニットワクチン

精製したり遺伝子工学的に作ったタンパクを体内に入れる方法

④RNAワクチン、⑤DNAワクチン

新型コロナウイルスのタンパクのもとになる遺伝子DNAや中間産物のRNAを注射して体内でタンパクを作る方法

ワクチンの安全性や効果を確認する段階

フェーズ1:ワクチンの安全性を確認する
フェーズ2:少人数に投与して安全性効果を見極める
フェーズ3:大規模の人数に投与して効果があるのかどうかを見極める

現状ではイギリスのオックスフォード大学が開発を進めているウィルスペクターワクチンが最も進んでいてフェーズ3です。

アメリカの製薬会社モデルナが開発を進めるRNAワクチンも7月にもフェーズ3へ進む予定。

おわりに

世界で開発を急いでいる新型コロナウイルスのワクチン開発について紹介しました。

一刻も早い安全なワクチンの開発が待たれています。

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