温泉地を選ぶ時に温泉の種類(泉質)で迷うことはありませんか?
今回は、日本の温泉の種類と特徴について分かりやすく解説します。
希望の温泉地と泉質をまよわずにすぐ判断できるようになります。
行きたい温泉を選んでリフレッシュしましょう!
そもそも温泉ってなに?
温泉は「温泉法」という法律によって定義されています。一部を引用しますので参考にしてください。
(定義)
出典:e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)
第二条 この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
定義にかいてある「別表」には温泉の温度と含まれる物質の規定量が決められています。
その「別表」を解説します。はじめに温度について以下の内容が記載されています。
温度(温泉源から採取されるときの温度)は、25℃以上
地中からゆう出した時の温度が25℃以上あれば温泉ということです。
もし25℃未満でも下記表(別表の19項目)の物質が1つでも「既定の含有量」が含まれていれば温泉になります。
また条件を満たせば水蒸気やガスも温泉となります。
物質名 | 含有量(1kg中) |
---|---|
溶存物質(ガス性のものを除く) | 総量1,000mg以上 |
遊離炭酸(CO2) | 250mg以上 |
リチウムイオン(Li+) | 1mg以上 |
ストロンチウムイオン(Sr2+) | 10mg以上 |
バリウムイオン(Ba2+) | 5mg以上 |
フェロ又はフェリイオン(Fe2+,Fe3+) | 20(百億分の1キュリー単位)以上 |
第一マンガンイオン(Mn2+) | 10mg以上 |
水素イオン(H+) | 1mg以上 |
臭素イオン(Br–) | 5mg以上 |
沃素イオン(I–) | 1mg以上 |
ふっ素イオン(F–) | 2mg以上 |
ヒドロひ酸イオン(HAsO42-) | 1.3mg以上 |
メタ亜ひ酸(HAsO2) | 1mg以上 |
総硫黄(S)〔HS–+S2O32-+H2Sに対応するもの〕 | 1mg以上 |
メタほう酸(HBO2) | 5mg以上 |
メタけい酸(H2SiO3) | 50mg以上 |
重炭酸そうだ(NaHCO3) | 340mg以上 |
ラドン(Rn) | 20(百億分の1キュリー単位)以上 |
ラジウム塩(Raとして) | 1億分の1mg以上 |
日本の温泉の種類と特徴
温泉の泉質は様々な特徴があります。
日本の温泉(療養泉)の種類は法律で決まっていて次の10種類に分かれています。
10種類の泉質 | お湯の感じ |
---|---|
1.単純温泉 (たんじゅんおんせん) | 刺激がマイルド pH7.5以上「美肌効果」 |
2.塩化物泉 (えんかぶつせん) | 湯冷めしにくい 傷に効く |
3.炭酸水素塩泉 (たんさんすいそえんせん) | 美肌の湯、美人の湯 清涼の湯 |
4.硫酸塩泉 (りゅうさんえんせん) | 傷の湯 美肌の湯 |
5.二酸化炭素泉 (にさんかたんそせん) | 血圧や動脈硬化に効く 心臓の湯 |
6.含鉄泉 (がんてつせん) | 鉄分を含む温泉 黄金の湯、赤湯 |
7.酸性泉 (さんせいせん) | 皮膚病によい湯 |
8.含よう素泉 (がんようそせん) | ヨードチンキのような湯 殺菌 |
9.硫黄泉 (いおうせん) | 殺菌効果が高い ゆで卵の腐ったような臭い |
10。放射能泉 (ほうしゃせんせん) | 通風の湯 |
療養泉ってなんだろう?
環境省に説明があったので引用します。
療養泉とは、温泉のうちとくに療養に役立つ泉質をもつ温泉を指します。 療養泉には、必ず泉質名がつけられ泉質ごとの「適応症」があります。
適応症は、泉質を問 わず共通する「一般的適応症」 と、 泉質によって定められた 「泉質別適応症」 があります。
引用:環境省 温泉療養のイ・ロ・ハ https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/ha.pdf
療養とは辞書によると「病気やけがの手当をし、からだを休めて健康の回復をはかること」です。温泉療養について環境省では次のように説明しています。
特定の病気の治癒よりも、・症状、苦痛の軽減 ・健康回復、増進 など全体的に改善する効用があります。
引用:環境省 温泉療養のイ・ロ・ハ https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/ha.pdf
と説明しています。
療養泉には必ず泉質名が付けられ、泉質ごとの「適応症」が2種類あります。
- 一般的適応症:泉質を問わず共通する
- 泉質別適応症:泉質によって定められる
温泉が療養泉の基準に満たない場合は泉質名はありません。
その場合は「温泉分析書」に次のように書かれています。
- 「温泉法上の温泉」
- 「温泉法第2条に該当する温泉」
環境省は昭和53年から主な現在のように化学成分を記した「新泉質名」を使うよう改訂しました。
それまでは「旧泉質名」の表示「炭酸泉」「重曹泉」「食塩泉」「正苦味泉」「芒硝泉」「石膏泉」「緑礬泉」でした。
温泉の泉質は含まれる化学成分の種類とその含有量により次のとおり10種類に分類されます。各泉質について説明します。
1.単純温泉
- 温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満
- 湧出時の泉温が25℃以上
pH8.5以上を「アルカリ性単純温泉」と呼びます。特徴は肌触りが柔らかく、癖がなく肌への刺激が少ないことです。
アルカリ性単純温泉は入浴すると「肌がすべすべする」感触があります。
泉質別適応症
・浴用 ➡ 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
2.塩化物泉(俗称:熱の湯)
- 温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上
- 陰イオンの主成分が塩化物イオンのもの
日本に多い泉質です。
陽イオンの主成分により「ナトリウムー塩化物泉」「カルシウムー塩化物泉」「マグネシウム―塩化物泉」があります。
この温泉を飲むと塩辛く感じます。塩分濃度が濃かったりマグネシウムが多いと苦く感じます。
泉質別適応症
・浴用 ➡ きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
・飲用 ➡ 萎縮性胃炎、便秘
3.炭酸水素塩泉(俗称:美人の湯、清涼の湯)
- 温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上
- 陰イオンの主成分が炭酸水素イオンのもの
美人の湯や清涼の湯とよばれることがあります。
陰イオンの主成分により「ナトリウムー炭酸水素塩泉」「カルシウムー炭酸水素塩泉」「マグネシウムー炭酸水素塩泉」があります。
カルシウムー炭酸水素塩泉からは、石灰質の温泉沈殿物、析出物が生成されることがあります。
泉質別適応症
・浴用 ➡ きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
・飲用 ➡ 胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)
4.硫酸塩泉(俗称:傷の湯、美肌の湯)
- 温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上
- 陰イオンの主成分が硫酸イオンのもの
「傷の湯」「美肌の湯」と呼ばれることがあります。
陰イオンの主成分により「ナトリウムー硫酸塩泉」「カルシウムー硫酸塩泉」「マグネシウムー硫酸塩泉」があります。
泉質別適応症
・浴用 ➡ きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
・飲用 ➡ 胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘
5.二酸化炭素泉(俗称:泡の湯、心臓の湯)
温泉水1kg中に遊離炭酸(二酸化炭素)が1,000mg以上
「泡の湯」「ラムネの湯」「心臓の湯」と呼ばれることもあります。
入浴すると全身に炭酸の泡が付着して爽快感がある。飲用すると炭酸の爽やかな咽越し。日本には少ない泉質です。
泉質別適応症
・浴用 ➡ きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
・飲用 ➡ 胃腸機能低下
6.含鉄泉(俗称:赤湯)
温泉水1kg中に総鉄イオン(鉄Ⅱまたは鉄Ⅲ)が20mg以上
貧血など女性の症状の改善に人気。別名「赤湯」とも呼ばれている。
陰イオンによって「炭酸水素塩型」と「硫酸塩型」に分類。 温泉が湧出して空気に触れると鉄の酸化により赤褐色に変化する特徴があります。
泉質別適応症
・飲用 ➡ 鉄欠乏性貧血症
7.酸性泉(俗称:皮膚病によい湯)
温泉水1kg中に水素イオンが1mg以上含まれている
口にすると酸味があり殺菌効果があります。
泉質別適応症
・浴用 ➡ アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
8.含よう素泉
温泉水1kg中によう化物イオンが10mg以上
うがい薬のような匂いが特徴。時間がたつと黄色く変色します。
泉質別適応症
・飲用 ➡ 高コレステロール血症 ※甲状腺機能亢進症の場合は注意
9.硫黄泉
温泉水1kg中に総硫黄が2mg以上
「硫黄型」と「硫化水素型」があり日本では比較的多い泉質です。
ゆでタマゴが腐敗したような特有の臭いが特徴。臭いは硫化水素によるものです。
泉質別適応症
浴用 ➡ アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症
(硫化水素型は末梢循環障害)
飲用 ➡ 耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症
10.放射能泉(俗称:痛風の湯)
温泉水1kg中にラドンが30×10-10キュリー以上(8.25マッへ単位以上)
「痛風の湯」とも呼ばれています。
放射能はレントゲン等の放射線量よりかなり少ない量です。
ごく微量の放射能は人体に良い影響を与えることが実証されています。
泉質別適応症
浴用 ➡ 高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
温泉の選び方
ここまで説明したように温泉に溶け込む様々な成分「鉄、硫黄、カルシウム、マグネシウム、硫酸、炭酸、塩・・」など様々な成分が含まれています。
特に温泉の中でも療養泉の泉質はつぎの10種類ありました。
10種類の泉質 | お湯の感じ |
---|---|
1.単純温泉 (たんじゅんおんせん) | 刺激がマイルド pH7.5以上「美肌効果」 |
2.塩化物泉 (えんかぶつせん) | 湯冷めしにくい 傷に効く |
3.炭酸水素塩泉 (たんさんすいそえんせん) | 美肌の湯、美人の湯 清涼の湯 |
4.硫酸塩泉 (りゅうさんえんせん) | 傷の湯 美肌の湯 |
5.二酸化炭素泉 (にさんかたんそせん) | 血圧や動脈硬化に効く 心臓の湯 |
6.含鉄泉 (がんてつせん) | 鉄分を含む温泉 黄金の湯、赤湯 |
7.酸性泉 (さんせいせん) | 皮膚病によい湯 |
8.含よう素泉 (がんようそせん) | ヨードチンキのような湯 殺菌 |
9.硫黄泉 (いおうせん) | 殺菌効果が高い ゆで卵の腐ったような臭い |
10。放射能泉 (ほうしゃせんせん) | 通風の湯 |
さらに分類すると70種類以上にもなるといわれています。泉質によって効果もさまざまです。
この表をもとに症状や目的に合わせて、自分にあった療養泉を選びましょう。
温泉と療養については、以下のサイトを参考にしてください。医療的なことも含めて参考になります。