〜陳述記憶と手続き記憶を知れば、年齢とともに記憶は進化する〜
最近、「あれ?名前が出てこない」「昨日のニュース、なんだったっけ」と感じることはありませんか?
年齢を重ねると“物忘れ”が気になり始めますが、実はこれは脳がしっかり働いている証拠でもあるのです。
文部科学省の調査によると、60歳を超えると短期的な記憶よりも経験や感情に基づく長期記憶が強く残る傾向があります。さらに、国立長寿医療研究センターの研究では、「新しい情報を覚える力」は年齢とともに変化しますが、「過去の知識を活用する力」はむしろ高まることがわかっています。
つまり、「記憶力が落ちた」のではなく、記憶の方法が変わったのです。
嫌なことを一晩寝たら忘れるのも、脳が不要な情報を整理してごみ記憶を消しているから。これは、シニアの脳がまだまだ元気な証拠なのです。
この記事では、
- 物忘れの正体(陳述記憶と手続き記憶)
- 忘れることの脳科学的な意味
- シニアが今からできる「記憶方法を変えるワザ」
をやさしく解説します。
「物忘れ=悪いこと」と思っていた方が、読み終える頃には脳の整理力を誇りに思えるようになりますよ。
物忘れは「脳のサイン」?

「昨日のニュースが思い出せない」「人の名前が出てこない」
そんな経験、誰にでもあります。特にシニアになると、物忘れが増えたと感じる人は多いでしょう。
以下は、「記憶力」が落ちる・変化する場合について厚生労働省が公開している情報です。
「今後の推計では高齢者の3人に1人が認知症又はMCIになる可能性がある」という数値から考えると、「だからこそ記憶方法を理解しておく価値がある」と言えるのではないでしょうか。
でも実は、物忘れ=脳の衰えではありません。
脳は年齢とともに、「記憶の保存方法」を上手に変えているのです。
参考サイト:厚生労働省 認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計
記憶には2種類ある:「陳述記憶」と「手続き記憶」
人の記憶は大きく分けて2つあります。
1️⃣ 陳述記憶(ちんじゅつきおく)
── 「昨日食べたもの」「友人との会話」など、言葉で説明できる記憶。
2️⃣ 手続き記憶(てつづききおく)
── 「自転車の乗り方」「料理の手順」など、体で覚えている記憶。
シニアになると、このうち陳述記憶が弱まりやすい傾向があります。
一方で、手続き記憶は衰えにくいことが分かっています。
つまり、「やり方で覚えたこと」「体で身につけたこと」は、年齢を重ねても残りやすいのです。
たとえば、長年の料理の味付け、習字の筆運び、車の運転感覚などがそうです。
👉 記憶力が落ちたと感じたときは、覚える方法を変えることがポイントになります。
一晩寝たら嫌なことを忘れた──それは脳のリセット機能

「昨日は落ち込んでいたけど、朝起きたら少しスッキリしていた」
こんな経験はありませんか?
これは、脳が不要な記憶(ごみ記憶)を整理している証拠です。
私たちは寝ている間に、一日で得た情報を整理整頓しています。
必要な記憶は残し、いらない情報は自然と消えていく。
この働きがあるからこそ、毎日新しい気持ちで過ごせるのです。
つまり、「忘れる力」も脳にとっては大切な機能。
忘れる=悪いことではなく、リセットして次に進むための準備なのです。
シニアが実践したい「記憶方法のシフト」

年齢とともに、記憶の得意・不得意が変わります。
そこで大切なのが、「覚え方を変える」ことです。
💡覚えようとせず、「思い出すきっかけ」を増やす
- スマホやノートにメモを残す
- 写真や音声で記録する
- 会話の中で「この前のあれね」と思い出す練習をする
💡五感を使って覚える
- 紙に書く(手の動きを使う)
- 声に出す(耳からも覚える)
- 匂いや音と一緒に覚える(関連づける)
💡意味を理解して覚える
単に「暗記」するのではなく、「なぜそうなのか」を考える。
理解が深まると、記憶が長持ちします。
希望を持てる脳の仕組み:「脳の可塑性(かそせい)」とは
人の脳は、年をとっても新しい神経回路を作る力を持っています。
これを「脳の可塑性(かそせい)」といいます。
たとえば、
- 新しい趣味を始める
- 新しい道を歩いてみる
- 新しい人と会話をする
こうした「新しい刺激」が、脳の回路を活性化させ、記憶力の改善につながります。
つまり、脳は使い方次第でいくらでも若返るのです。
記憶力を取り戻す鍵は、「脳を休ませすぎないこと」と言えるでしょう。
ぼくが体験した英会話の驚き!

中学高校と勉強した英単語ですが、ほとんど忘れていませんか?
実は忘れているのではなく、いったん分解して脳に格納して残っています。
しかし、別の記憶が沢山あって、もとに戻せなくなっているだけだと言われています。
そこで「陳述記憶」で記憶したことを、体で覚える記憶「手続き記憶」に変換することにしました。
具体的には、外国人講師を目の前にして「よく使う単語を使って話しました」。
英会話という「体で覚える」方法に変換して、会話の練習を週1回、たったの30分だけやりました。
例えば「I am going to meet him」=「私は彼に会うつもりですよ」という会話の場合です。
「~するつもりです」という言い回しは、中学で習いましたが、すぐに口に出てきません。
しかし、外国人講師と顔を合わせて英語の音声、耳と目と体などを使って「体で覚える」と、昔習った英語を「体で覚える記憶」に置き換えることができ、次からはスラスラと口から出てきました。
その記憶は70才になっても忘れていません。
シニアから英会話を始めても決して忘れません。
記憶力がイマイチなぼくがやってみて確信が持てた方法です。
お陰様で英会話は現在70才を過ぎてもすぐにペラペラと出てきます!
是非、好きな分野で記憶方法を変えてみて下さい。
まとめ:「物忘れ=脳のリセット」上手に忘れて、豊かに覚える
物忘れは、脳がうまく“整理整頓”しているサインです。
年齢とともに記憶の方法を変えれば、脳は再び輝きを取り戻します。
忘れることを恐れず、
「忘れる力」と「覚える力」
この二つを上手に使い分けていきましょう。
シニアの脳には、まだまだ伸びしろがあります。
よくある質問(FAQ)
Q1.物忘れは脳の衰えですか?
A1.いいえ。物忘れは脳が情報を整理しているサインです。年齢とともに記憶の仕組みが変わるだけで、脳の機能が低下したとは限りません。
Q2.陳述記憶と手続き記憶の違いは何ですか?
A2.陳述記憶は「事実を覚える記憶」、手続き記憶は「体で覚える記憶」です。シニアになると手続き記憶がより強く残りやすい傾向があります。
Q3.睡眠中に記憶は整理されますか?
A3.はい。睡眠中、脳は一日に得た情報を整理し、不要な記憶を消しています。このため、寝ることで気持ちがスッキリするのです。
Q4.シニアでも記憶力を改善できますか?
A4.できます。脳には“可塑性”と呼ばれる変化する力があります。新しい趣味や会話などの刺激で、記憶力は向上します。
Q5.記憶力を保つ日常習慣はありますか?
A5.メモを取る、声に出す、五感を使う、理解して覚えるなどの方法が効果的です。繰り返し体験することで手続き記憶も強化されます。

