2021年4月(6月受給分)からスタートした年金の「改正ルール」とは何か?
年金生活はどうなるのか?
かつて国会で議論を引き起こした「年金カット法」のスタートにより、いったい年金生活にどんな影響が及ぶのでしょうか。
厚生労働省の資料も参考にして「年金カット法」と呼ばれている改正ルールを調べてみました。
「年金カット法」とはなにか?
2016年(平成28年)12月14日、第192回臨時国会において「年金カット法」なる新たな法律が成立したことは知ってましたか?
正式な名称は「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」と呼びます。
野党の猛反対の中で2016年11月25日に強行採決されたのが、別名「年金カット法」あるいは「年金改革法」です。
この法案には5つの項目が盛り込まれています。
この中で、気になるのが3番目の「年金額の改定ルールの見直し」です。
参考資料:厚生労働省 年金改革法(平成28年法律第114号)
「年金額の改定ルールの見直し」とは・・
今までの制度では、「賃金が下がった場合でも、それ以上に物価が上がっていれば、年金の給付額が下がらない」というものでした。
しかし今回の改革では、「例え物価が上昇していても、賃金の下げ幅が物価の上昇を上回った場合には年金の給付額が下がる」ということになります。
簡単に言うと「物価が上がって生活の出費が増えたとしても、年金が減る可能性もある」ということです。
年金生活の高齢者にとっては、ちょっと不安でもあり厳しい内容に改正されていたのです。
年金受給額にどんな影響があるのか?
実際にどの位の影響があるのか調べてみました。
当時の記事や解説をもとにまとめると次のようになります。
民進党の試算(当時)
当時の民進党が示した試算によると、「10年間で5.2%減る」という予測になりました。
モデル世帯での民進党の予測は次の通りです。
厚生年金:年金14万2,000円(月1万1,800円)減額
厚生労働省の試算
厚生労働省が出した試算も紹介します。
厚生年金:年間8万4,000円(月7,000円)減額
厚労省の試算は、「2017年度まで続いた厚生年金保険料の引き上げによる可処分所得の減少がもたらす名目手取り賃金減少分を、意図的に反映させていない」ために野党の試算と差がでていると言われています。
この辺は、様々な意見や分析が入りまじっていて、どう判断したらいいのか難しいところです。
しかし、この改正がスタートしたことには間違いはありませんね。
年金生活をどのようにすればいいのか?
調査によると、年金受給者の内、約600〜700万人にも及ぶ人々の生活は生活保護の基準以下ともいわれています。
2019年6月3日に金融庁が発表した「人生100年時代」を見越した報告書では、夫婦が95歳まで生きるとすると約2千万円のなんらかの金融資産を取り崩す必要があると試算していました。
公的年金制度に頼った生活設計だけでは老後に資金不足になるから、老後の資産形成を促す内容でした。
公的年金だけでは通常の生活費も賄えない現状にあって、年金改正の施行は高齢者世帯の家計がますます厳しいものとなると予想されます。
これからの時代は、「老後は年金だけに頼るのではなく、第二・第三の収入源を確保する」ことが大切になってくるのではないでしょうか。
まとめ
年々、年金受給の生活は厳しくなる一方です。
今回の改正された内容をもう一度確認すると、次の通りです。
「例え物価が上昇していても、賃金の下げ幅が物価の上昇を上回った場合には、給付額が下がる」
新型コロナの影響により賃金の値下げ幅が物価上昇を上回るならば、年金額が下がる可能性もないとは言えないかもしれません。