「老後をどう生きるか・・・」
「引退後に幸せになれるか・・・」
これは、現代のわれわれシニアにも関心の高いテーマです。
そこで、歴史上の人物の老後を比較してみたら、人生の後半を豊かに生きるためのヒントが見えてきました。
今回取り上げるのは、江戸時代の代表的政治家 田沼意次 と、幕末の最後の将軍 徳川慶喜です。
二人はどちらも一度は日本の中心に立った人物ですが、晩年の過ごし方のスタイルがまったく違いました。
この記事では、史実を調べて比較してみた結果を以下2つのっポイントからまとめました。
「なぜ二人の老後はここまで違ったのか?」
「老後を幸せにする生き方とは何か?」
をわかりやすく解説します。
田沼意次の老後の生き方スタイル

老後の状況:権力を失い、生涯の軸を奪われた老後
◆ 田沼意次:仕事への執着が強かったが、引退後に「第二の軸」を持てなかった
田沼意次は、政治改革に積極的で行動力のある人物でした。
しかし彼の人生は「政治=自分の価値」という強い思いに支えられていました。
そのため、
- 将軍家治の死
- 政敵の攻撃
- 領地没収
- 息子の事件
などが重なり 一気に権威と役割を喪失。
老中を罷免され、所領の大部分を没収された後、遠江国相良城も破却され、江戸での謹慎生活を送りました。この蟄居先となった屋敷は、現在の東京都中央区築地(万年橋と采女橋の北側付近)にあったとされています。
現代でいうと「仕事中心の人が定年後に喪失感を抱える」状況と重なります。
第二の人生の軸が持てなかったことが、不遇な晩年につながったと考えられます。
徳川慶喜の老後の生き方スタイル

老後の状況:役目を自ら降り、趣味人として第二の人生を開いた老後
◆ 徳川慶喜:役目を降り、趣味を伸ばし、社交的に生きた「第二の人生の成功者」
対照的なのが徳川慶喜です。
彼は将軍職を自ら返上し、維新後は新政府に恭順。
静岡での隠居生活では、
- 狩猟
- 写真
- 絵画
- 自転車
など、多趣味で知られています。
また、明治政府や地元の人々とも良好な関係を築き、
のちには公爵位も授与。
このように、
「将軍という役割」に依存せず、新しい楽しみを見つけて生き抜いた
点が慶喜の強さです。
結果として、慶喜は76歳の長寿をまっとうしました(当時としては非常に長命)。
2人の比較から見えた「老後の幸福の方程式」
歴史的事実と心理学を合わせて考えると、田沼と慶喜の老後の差は次のように比較できます。
| 項目 | 田沼意次 | 徳川慶喜 |
|---|---|---|
| 役割の捉え方 | 政務=自分の価値 | 将軍を降りても新しい自分を作る |
| 引退後の環境 | 失脚・孤立 | 保護され、社交的 |
| 趣味 | ほとんど記録なし | 狩猟・写真・絵画など多数 |
| 心理的状態 | 喪失・孤立の可能性大 | 趣味や人間関係による安定 |
| 寿命 | 69歳 | 76歳 |
この比較した結果を見て、その差がはっきりしてきます。
過去の栄光のしがらみを引きずってしまうか、或いは、生き方を変えるかの選択です。
つまり、過去は幻でありカゲロウのように実在していない。今は何もないことに気付けるかどうか。
歴史と心理学から見えた結論
「老後は、役割を手放した後に新しい楽しみを持つことが重要」
現代の研究でも、
- 積極的な趣味
- 社会的つながり
- 自主性のある生活
- 新しい役割の獲得
これらの選択が高齢者の幸福な生き方に直結することがわかっています。
田沼意次と徳川慶喜の差は、まさにこの選択の条件の有無でした。
結論
歴史から見えてくる老後の幸福のポイントは明確です。
- 役割に執着しすぎると、引退後に苦しくなる
- 趣味や新しい世界を持てる人は、老後に強い
- 柔軟に生き方を変えられる人はストレスが少なく長生きしやすい
田沼意次と徳川慶喜の晩年は、現代の私たちにも
「第二の人生の作り方」
という大きな示唆を与えてくれます。
まとめ
実はぼくがサラリーマンを退職して数年は、過去の役割の幻に固執していました。
その結果、口から出てくるのは「昔はこうだった!」「現役時代は、こんなにすごかった!」という口癖。
しかし、それはとっくの昔に過ぎ去ったことで、今現在はなにも実在しないことです。
この重要な考え方に気付きました。
現役引退後は、新しい自分の生き方を見つけ、わくわくドキドキしながら楽しく生きることを提案したいと思います。
参考文献・史料リスト
(※どれも一般的な歴史研究で用いられている信頼性の高いもの)
■ 田沼意次関連
- 大石慎三郎『田沼意次の時代』
■ 徳川慶喜関連
- 渋沢栄一『徳川慶喜公伝』
- 家近良樹『徳川慶喜』
■ 高齢期・幸福・役割喪失に関する理論(心理学)
- エリクソンの発達段階理論(後期高齢期の課題)
- ロバート・アッチリー「退職と役割変化の理論」
