老後の住まいを考えるとき、「戸建てに住み続けるべきか」「マンションに住み替えるべきか」で悩む方は多いのではないでしょうか。
体力の衰えや維持費、駅からの距離、家の管理、そして資産価値――判断にはいくつもの要素が絡みます。
この記事では、戸建てとマンションそれぞれのメリット・デメリットを比較しながら、住み替え時の費用の現実と後悔しない選び方をわかりやすく解説します。
さらに、実際に住み替えを経験した人の声や、リバースモーゲージなど老後資金に関わる制度についても紹介。
「自分にとって本当に暮らしやすい老後の住まい」とは何かを、一緒に考えていきましょう。
老後の住まい、いま多くの人が悩む理由

定年後や70代に入ると、多くの人が「この家にずっと住み続けて大丈夫だろうか」と考え始めます。若い頃は快適だった戸建ても、階段の上り下りや庭の手入れが負担になり、冬の寒さが身にしみるようになります。
一方でマンションは便利そうに見えても、管理費や修繕積立金などの“固定費”が重く感じることも。つまり、老後の住まいには「安心」と「負担」のバランスをどう取るかが重要です。
総務省の高齢者の住み替えの調査からわかったこと
令和5年に総務省統計局が実施した「高齢者の住み替えに関する調査」によると、65歳以上の高齢者の約30%が住み替えを検討していると回答しています。 特に一人暮らしの高齢者では、住み替え意向が高い傾向にあります。 住み替え先としては、シニア向け賃貸住宅やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が挙げられています。
また、65歳以上の高齢者の約50%が現在の住宅に満足しており、住み替えの意向は低いとされています。 しかし、住み替えを希望する高齢者の多くは、交通の便が良く、生活支援サービスが充実した地域への移住を希望しています。
戸建てとマンションのメリット・デメリット比較
老後の暮らしにおいては、住まいの構造や維持費が生活の質に直結します。
ここでは、戸建てとマンションを実際の生活視点で比較します。
項目 | 戸建て | マンション |
---|---|---|
管理の手間 | 自分で管理(自由だが負担) | 管理会社に任せられる(管理費あり) |
バリアフリー | 改修が必要 | 最初から段差が少ない |
セキュリティ | 自己防犯が中心 | オートロック・防犯カメラなど安心 |
維持費 | 固定資産税や修繕費は自分で | 管理費・修繕積立金が毎月発生 |
資産価値 | 土地が資産として残る | 建物は経年で価値が下がりやすい |
老後にマンションへ住み替える人が増える理由

近年、シニア世代で「駅近マンション」に住み替える人が増えています。
理由は次の3つに集約されます。
- 冬でも暖かく、光熱費が安い
断熱性の高いマンションは、戸建てに比べて暖房効率が良く、光熱費を抑えられます。 - 生活の利便性が高い
買い物・病院・銀行などが徒歩圏内にあることが多く、車を手放しても暮らせます。 - 防犯面の安心感
オートロックや防犯カメラなど、セキュリティ面で安心です。
とくに高齢夫婦だけの暮らしでは、「安心」と「便利さ」が何よりも大切になります。
その結果、マンションへの住み替えを検討する人が年々増えているのです。
友人が実際に悩んだ体験:戸建てからマンションへ住替えした

正直に言えば、私は不動産の専門家ではありません。
それでも、老後は戸建てに住み続けるべきか、それともマンションに住み替えるべきか――このシンプルな悩みをずっと抱えていました。
今は戸建てに暮らしていますが、年齢を重ねるにつれて、「将来はマンションのほうが安心なのでは?」と考えるようになったのです。
そこで一度、マンションへの住み替えを真剣に検討してみました。
そのときに感じた「マンションに住み替えたいと思った3つの理由」をご紹介します。
理由①:老後は戸建てよりもマンションのほうが便利
マンションの最大の魅力は、生活に必要な施設が近くにそろっていることです。
駅前には商店街やスーパー、病院があり、徒歩圏内でほとんどの用事を済ませることができます。
年を取ると、車の運転が難しくなったり、バスやタクシーを利用するのも負担になります。
その点、「歩いて10分以内で買い物も通院もできる」環境は、老後の暮らしを大きく支えてくれます。
郊外の戸建てでは不便に感じることが、マンションでは日常の安心につながる――そう実感しました。
理由②:戸建てより管理がずっとラク
戸建ての家は、住み慣れていても管理の手間が多いのが現実です。
窓が多く、鍵の閉め忘れや電気の消し忘れも年齢とともに増えていきます。
一方、マンションは鍵ひとつで外出できる安心感があります。
また、戸建てのように外壁や屋根の修繕に大きな費用をかける必要もありません。
もちろんマンションにも修繕積立金はありますが、計画的に管理されている安心感があります。
「日々の小さな手間や心配が少ない」――これは老後の暮らしにおいて、とても大きなメリットです。
理由③:交通の便が良く、車がいらない生活ができる
年齢を重ねると、どうしても運転のリスクが高まります。
免許を返納した後の生活を考えると、「車がなくても暮らせる立地」であることが重要です。
その点、駅近のマンションなら、公共交通機関を利用しやすく、外出の自由度が高いのが魅力。
ちょっとした買い物や通院、趣味の外出も、バスや電車を利用して無理なく出かけられます。
「車がなくても不便を感じない生活」――これは、老後を安心して暮らすための大切な条件だと思います。
こうして振り返ると、老後にマンションを選びたい理由は、
「便利さ」「管理のしやすさ」「安心して外出できる環境」という3つに集約されます。
もちろん、戸建てにも静かな暮らしや庭のある魅力があります。
それでも、老後の自分の体力・生活動線・交通手段を考えると、
マンションのほうが無理のない暮らしができる――そう感じました。
実際に物件を比較してみた

一度、老後の住み替えを考えたとき、実際にマンションの物件を調べたことがあります。
驚いたのは、築50年の中古マンションでも60㎡で2,500万円ほどするケースがあることです。
その理由は、駅から徒歩10分以内という立地の良さ。老後の生活を考えると、通院や買い物にも便利で人気が高いのです。
一方で、戸建て住宅は年数が経つと建物の資産価値がゼロになるという特徴があります。
最終的に残るのは「土地の価値」だけで、建物自体はほぼ評価されません。
実際、戸建ての建物は新築から10年で資産価値が半分以下に急落し、
築22年を超えると9割以上下がる例も多く見られます。
そのため、老後に「一人暮らしになるから戸建てを売ろう」と思っても、
土地代だけの二束三文でしか売れないケースもあります。
さらに、売却時には注意点があります。
古家を解体して更地にすれば売れやすくなりますが、その間は固定資産税が高額になります。
例えば、200㎡以下の土地で固定資産税が7万円だった場合、
更地にすると「住宅用地の特例」が外れるため、6倍の42万円に跳ね上がることもあります。
逆に、古家を残したままにしておくと特例で1/6に減額されますが、今度は「売れにくくなる」という問題が発生します。
つまり、戸建ては売るタイミングを逃すと資産価値が急速に下がり、維持コストが増えるというリスクを抱えています。
子どもや孫がいない場合、相続後に「処分に困る空き家」になることも珍しくありません。
その点、マンションは築年数が経っても一定の資産価値を保ちやすいのが特徴です。
とくに駅近や生活利便性の高い立地なら、古くても比較的高額で取引されることが多く、
老後の住まいとしても「売却・住み替えの柔軟性」がある点で、戸建てよりも有利といえるでしょう。
老後の出費をリアルに計算してみた
老後の住まいを決めるうえで、見逃せないのが「固定費」です。
戸建てとマンションで、1年あたりどのくらい差が出るのかを見てみましょう。
費用項目 | 戸建て | マンション |
---|---|---|
管理費 | 0円 | 月1〜2万円 |
修繕積立金 | 自己判断で都度支出 | 月1〜1.5万円 |
駐車場代 | 敷地内なら無料が多い | 月5,000〜20,000円 |
光熱費 | 広さに比例して高め | 断熱性が高く抑えやすい |
一見するとマンションの方が維持費が高いように見えますが、戸建てでも屋根・外壁の修繕に100万円単位が必要になることもあります。
つまり、「どちらが得か」は一概に言えず、長期的な維持コストを想定することが重要です。
資産価値とリバースモーゲージの考え方
老後の資金計画を考える際、「自宅をどう扱うか」は大きなテーマです。
近年注目されているのが「リバースモーゲージ制度」。
自宅を担保に金融機関から資金を借り、亡くなった後に家を処分して返済する仕組みです。
- 自宅に住み続けながら老後資金を確保できる
- 戸建てでもマンションでも利用可能(評価額による)
- ただし、地価下落や金利変動のリスクもある
この制度は“老後破産の予防策”としても注目されていますが、契約内容を理解せずに利用すると、家族トラブルのもとになることもあります。
必ず専門家に相談し、自分の資産状況に合った方法を選びましょう。
住み替えで後悔しない3つのポイント
- 家族と十分に話し合う
住まいの決断は一人で行うと後悔します。介護や相続の問題まで話し合っておくことが大切です。 - 「立地」と「段差」を優先する
利便性とバリアフリーは老後の快適さを左右します。特に駅や病院への距離は重要です。 - 住み替え後の維持費を把握する
マンションの管理費や修繕積立金、駐車場代を「生活費の固定費」として見積もっておくと安心です。
老後の住まいは“今の快適さ”だけでなく、“10年後の自分”の暮らしをイメージして選びましょう。
戸建てかマンションか迷ったら
結論から言えば、「どちらが正解」という答えはありません。
大切なのは、自分がどんな老後を過ごしたいかです。
自然の中で家庭菜園を楽しみたいなら戸建て。
買い物や通院を便利にしたいならマンション。
もし判断に迷ったら、「あと10年、今の家で生活できるか?」を基準に考えてみてください。
体力・交通・修繕の3点が不安なら、住み替えのサインです。
まとめ:老後の住まい選びで後悔しないために
- 戸建ては自由で土地資産が残るが、管理負担が大きい
- マンションは便利で安心だが、維持費がかかる
- リバースモーゲージなど制度も活用できる
- 最後は「自分らしく生きられる場所」を選ぶこと
老後の住まい選びは、“終の住処”を決める大切な選択です。
焦らず、家族と話し合いながら、将来の暮らし方を見据えて判断しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1.老後は戸建てとマンションどちらがいいですか?
A1.管理の手間や段差を考えるとマンションが便利ですが、土地資産を残したい人は戸建てが向いています。自分の体力・家族構成・資金計画を基準に判断することが大切です。
Q1.老後にマンションへ住み替える人は多いですか?
A1.はい。70代前後で駅近マンションへ住み替える人が増えています。理由は、冬でも暖かく、防犯性が高く、買い物や通院が便利だからです。
Q1.老後の住み替えで失敗しないコツは?
A1.維持費の試算、家族との話し合い、立地の確認です。特に「10年後の自分」を想像し、無理のない生活動線や費用を基準に判断すると失敗しにくくなります。