この物語は、70歳を迎えた主人公が、60代とは異なる生活の変化を実感しながら、新しい日々を前向きに生きる様子を描いたものです。
定年後の自由な生活を楽しんでいた彼は、体力や気力の衰えを感じつつも、日常の小さな幸せを見つけながら、70歳ならではの新たな生き方を模索していきます。
プロローグ:70歳の誕生日

佐藤一郎(仮名)は、70歳の誕生日を静かに迎えた。
大学卒業後、60歳まで同じ会社で真面目に働き、定年退職。その後、契約社員として2年間働いたが、体力の限界を感じ62歳で完全に仕事を辞めた。
そこからは再就職せず、退職金を切り崩しながら悠々自適な生活を送ってきた。
65歳からは満額の年金で自由な暮らしを楽しんでいる。
60代前半は、現役時代にできなかった趣味のブログ運営、日本一周の車旅、海外旅行などを満喫した。
しかし、60代後半になると体の衰えを実感することが増えた。足腰が弱くなり、歩く速度が落ちた。
現役時代のストレスが原因で発症した突発性難聴の後遺症が進み、補聴器が手放せなくなった。
気力も少し落ち込み、以前ほどの活力は感じられなくなった。
「70歳を迎えた今、これからの人生をどう生きるか——」
60代とは違う70代の生き方を考える時が来た。
一郎は、新たな日々を前向きにスタートしようとしていた。
第1章:60代とは違う70歳?

70歳になった朝、いつものように新聞を広げたが、以前より小さな文字が読みづらく感じた。
食卓に並ぶ朝食も、60代の頃より量が少なくなっている。
「最近、あまり食べられなくなったな」
妻の洋子が笑いながら言う。
「昔は朝からご飯おかわりしてたのにね」
一郎は苦笑した。
60代までは自分の衰えを意識することは少なかったが、70歳になった途端、それが現実として目の前に現れてきたのだ。
第2章:1日があっという間に過ぎる
朝食を食べ、少し新聞を読んでいたら、気づけば昼。
昼食後に散歩をして、帰ってきたらもう夕方だった。
「今日は何をしたっけ?」
ぼんやり考えるが、大したことはしていない。
それなのに時間だけがどんどん過ぎていく。
若い頃は1日が長かったのに、今はまるで風のように過ぎ去る。
「70歳って、こんなに時間が早く過ぎるものなのか」
そんなことを思いながら、湯飲みを手に取った。
第3章:妻と1日1時間話すのがいい

夕食後、一郎は洋子と向かい合ってお茶を飲んでいた。
「最近、昔のことをよく思い出すわね」
洋子が懐かしそうに言う。
二人で子どもが小さかった頃の話をしたり、若い頃の旅行の思い出を語ったりする時間が増えた。
「一郎さん、昔より優しくなった気がするわ」
洋子の言葉に、一郎は少し照れくさくなった。
以前は仕事に追われ、家でじっくり話す時間も少なかった。
今は、こうして話す時間が何より大切だと感じている。
第4章:美味しいお酒が欲しくなる

夜、冷蔵庫を開け、ゆっくりと日本酒を注ぐ。
若い頃は量を飲めたが、今は少しだけでいい。
「いい酒は、ちびちびやるのが一番だな」
舌の上に広がる旨味をじっくり楽しむ。
一緒に並ぶ肴も、ごく少量。
量より質を求めるようになった自分に気づく。
70歳の酒の楽しみ方は、以前とは違うのだ。
第5章:美味しい食べ物が少しでいい

「一郎さん、お刺身少しでいい?」
洋子がそう聞いてくる。
昔なら「もっとくれ」と言っただろう。
しかし今は、ほんの数切れで十分。
「うん、それでいいよ」
噛みしめるほどに味わいが増す。
以前はガツガツ食べていたが、今はじっくり味わう喜びを知った。
第6章:お金は少しで満足
70代になり、物欲が減ったことに気づいた。
新しい服も、車も、ブランド品も要らない。
「必要なものはもう全部あるな」
本当に欲しいものは、美味しいお酒や、家での静かな時間。
お金の価値が変わるとは、こういうことなのかもしれない。
第7章:ゆっくり歩く

散歩の途中、公園のベンチに腰を下ろす。
歩くペースが遅くなったが、それが悪いこととは思わない。
「急ぐ必要なんてないさ」
ゆっくり歩けば、季節の移り変わりや、道端の花にも気づける。
若い頃には見逃していたものが、今はよく見えるのだ。
第8章:ラジオが好きになる

テレビの音がやかましく感じるようになった。
代わりに、ラジオをつける時間が増えた。
「ラジオの声って、落ち着くな」
映像がない分、想像の余地がある。
天気予報や、昔の音楽番組を聴きながら、静かに時を過ごすのが心地よい。
第9章:天国の近さを感じる

親しい友人の訃報が届くことが増えた。
つい数年前に会ったばかりだったのに。
「次は俺の番かもしれんな」
冗談めかして言うが、心のどこかで本当にそう思う時がある。
だが、それが怖いわけではない。
ただ、限られた時間をどう生きるかが大切なのだと改めて思う。
第10章:70歳の生き方

「70歳になって、いろいろ変わったけど」
そう言いながら、一郎は洋子と並んで歩く。
今の暮らしが心地よい。
急ぐことも、焦ることもない。
70歳の人生は、こうして穏やかに流れていく。
エピローグ:70歳を生きるということ

夜、布団に入りながら、ふと思う。
70歳は決して「終わり」ではなく、新しい生き方の始まりなのかもしれない。
「明日は何をしようか?」
そんなことを考えながら、ゆっくりと目を閉じた。
この物語は、70歳に到達したぼくをモデルにストーリーを書いてみました。
当ブログを始めた60代前半から、あっという間に70歳に到達!
予想した通りのスピードでしたが、それまで早めに楽しむことにしたことで、とても素晴らしい60代を過ごせました。
これから始まる70代は、世の中ではAIや世界情勢など新たな時代を迎えます。
老後の生き方を改めて模索する時かもしれません。