なぜデジタルニュースが配信される時代に,いまさら朝刊を契約したのか?そこから見える新聞業界の今を紹介します。
新聞はデジタルへシフトしていて紙の新聞を定期購読している家庭は激減しているようです。日本新聞協会のデータによると2019年の発行部数は3781万1248部で2018年と比べると約5%減少していて−5%は2年連続です。朝日新聞ですら2019年3月から1年間で41万部減少しているのです。1年で約7.3%は大きな落ち込みです。
一方、朝日デジタルはメインユーザーの幅が男女とも25才~54才が多くなっています。特にPCで閲覧しているのは25~54才の男31.4%、女15.4%、スマホでは25~44才の男27.9%、女30.8%となっています。
朝日デジタルの2019年11月の会員数(有料、無料)で350万人、月のPV数はPCで7,758万PV、スマホは1億2344万PVとなっています。(参考:DATA FILE 2020 朝日新聞媒体資料)
なぜ今になって朝刊を契約したのか?
なぜあれほど新聞はもう取らないと決めたのに、あっさりと3カ月も朝刊を契約したのでしょう。そこには意外な物語があったのです。
ポストに新聞が入っている?
最近、なにやらポストに「朝日新聞」が入っているのです。折込も無しの本体だけがポストに入っているのに気が付きました。
女房に聞くと「5日間だけ、入れさせて!」という事らしく、新聞の契約はしないことを説明して了承したのがきっかけです。
新聞が朝になるとポストに入っていることが、どこか新鮮にも思えたのです。でも、今ようやく新聞をやめたのですから復活はしたくないのです。スマホとPCのニュースで十分だから、契約をするつもりはありませんでした。
5日目の新聞も終わりました。しばらくすると玄関の外で女房と新聞店の方が話しています。きっと契約をしてくれと営業に来たのだと思いそのまま部屋に居たら、なにやら女房が大声で「こんなに!」と叫んでいるのです。
販売店の押し売りか?
これは何かあるかもしれない、押し売りかもしれないと思い、玄関に出てみました。するとそこには汗まみれの営業担当の方が両手にティッシュの箱とトイレットペーパーを抱えて、何とかと頭を下げているのです。
夕方の暑い時で汗まみれです。
最初は「もう新聞は取らないって言ったですよね~」というと、「分かってます。今回が本当に最後です」というのです。泣きたいくらいに頭を下げる姿を見ると、これはいつもと違う。どこか腹をくくって来たようです。真剣さが伝わってくるのです。
そこで、とりあえず事情を聴くことにしたのです。
コロナで死にそう・・・
「もう来ない予定でした。しかし、コロナになってから、死にそうなのです・・・」仕事が激減したようなのです。
一発逆転で負けたのです。
確かにその販売店は昔からの付き合いで店長をよく知っているのです。だからウソを言う販売店ではありません。経営がとても悪化していて一軒ごと回っているというのです。
自分も営業で苦しい時に助けてもらったことを思い出し、本気かどうか見分けがつくので、ここは大胆に判断しました。
11月から3カ月間、朝刊を取ることにしたのです。
昭和の営業スタイルの「おっさん」に心を奪われた
新聞屋さんは、軽自動車から景品を運んできました。新聞を契約してくれたのでお礼です。良し悪しは別として気持ちだからと景品をくれました。ティシュとトイレットペーパーはさっきもらたので、違うものです。東京オリンピックの歴史のパンフとあるグッズです。
販売獲得で配る景品は、違法なのか?
そもそも、この時代に契約で景品など渡したりもらったりすると違法になるのではないか?
もらってしまったのですが、一応調べてみました。
新聞業における景品類の提供に関する事項の制限
引用:新聞公正取引委員会
景品表示法に基づき、「新聞業における景品類の提供に関する事項の制限」 (告示)が定められています。この告示により、新聞を販売する際の景品類の上限が定められており、例えば契約に際してお渡しする景品は、購読料(最大6か月)の8%が上限になります。
調べた結果から判断すると、なるほどティッシュの箱とトイレットペーパーだけなら既定の範囲内でしょうね。
そこになにやらくれた面白いグッズとはこれです。
袋から取り出すと、それは拡大できるレンズなのです。
「新聞レンズ」という面白いというか、昔懐かしいというか、おじいちゃんが使っていたようで思い出してきました。そういえばテレビのブラウン管の前に取り付けた時代もあったような・・・
使ってみると実に良く見えるのです。老眼がひどくなっているのですが、これがあると良く見えて女房も大喜びなのです。
これで朝日新聞を読んでくれ・・・ということでしょうか。
おっさんは、昭和の香りがした
今時の営業では見当たらなくなったスタイル。どこか寅さんのような懐かしさが蘇るのです。ネット販売やブログに慣れていると「人が汗かいて営業する」というスタイルに人としての思いやりがにじみ出てしまうのです。
景品も枠ギリギリでの勝負だから、残りは人として頑張るしかないのです。
昭和のゆるい時代の営業の温かみをくれた「おっさん」でした。
今の新型コロナ時代の朝刊の売り方
販売店は昔からのお付き合い。なので今回の新聞契約したので、夜に販売店からお礼の電話がありました。今はオレオレ詐欺があるので、顧客に安心してもらえるように確認しているのだそうです。
今の時代は「期間を短く区切って販売する戦略」を取っているそうです。オリンピックの期間だけ、年末年始だけ、緊急事態宣言中だけ、夏休みだけ、お盆だけ・・・
3カ月区切りで契約をするような感じです。そうすることで顧客の新聞契約への垣根が低くなり、結構成績を上げているようです。
おわりに
デジタルでニュースが配信されるのが一般的になったのに朝刊を契約した理由を紹介しました。たまには朝刊もいいものですね。
昭和の「おっさん」の香りに負けてしまった話です。